| ──夢を見た。
手を繋いでいた。 大きくてしわしわな、硬くて渇いていて、暖かい手だった。 少女は、その手が好きだった。
光が満ちて。 瞬きをすると、手は白く細く、美しいそれに変わった。 顔を上げれば、大好きな青い竜が微笑んでいた。
幼い頃、小さなクレバスに落ちたことがあった。 昏く、青い青い氷の中で。声を出して泣けば、心が折れてしまいそうだから。
黙って涙を流す少女に、ずっと。 大きなクジラが、大きな氷たちと共に優しく唄いながら、寄り添っていた。
やがて沢山の手が、少女をクレバスの底から引き揚げる。 泣きながら竜令嬢に抱き着く、小さな少女を。
影のクジラは、音もなく見守っていた。
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